この記事では、中国に伝わる数多くの伝説の中で、星にまつわる伝説をまとめています。多くは似たりよったりな内容になっていますが、その時の皇帝が出てきたりなど歴史とも関わる伝説が多く存在しています。中国の伝統的な考え方や歴史について知りたい方はぜひご一読ください。
牽牛織女のお話
まずは日本でもとても有名な七夕の物語です。

天の川の東の方に天帝の娘である織女というとても美しい女性がいました。彼女は朝から晩まで機を織る仕事をしていました。彼女には機を織る以外になにもしていたことはなく、楽しみなど一つもありませんでした。その姿を見て父親である天帝が織女を憐れみ、結婚でもすれば少しは気が晴れるだろうと考え、天の川の西に住んでいた牽牛と結婚させることにしました。
その結婚から織女の生活は彼女にとって素晴らしく楽しいものになりました。しかしその楽しさのあまり、彼女の仕事である機織りをやめてしまったのです。それを見て天帝はこれは良くないと思い、織女に「東に帰ってきて機を織りなさい。愛に溺れて仕事を放り出すとは何事だ。一年に一回は牽牛と会わせてやるがそれ以外は許さない」と叱りつけました。
しかし織女は当然牽牛のそばを離れたくはありません。しかし天帝の命令に背く事はできず、別れを告げ、東に帰り自らの転職である機織りを以前と同じようにしながら、牽牛と会える日を待ちわびているのです。
天の川とは何か(ロマンチックVer)
昔愛し合った男女がいましたが、二人の死後彼らは星となりますが、それらの星は遠く離れていてお互いに会いに行くことができませんでした。そこで星と星との間に橋をかけて会いに行けるようにした。その橋こそが天の川である。
という伝説もあるそうです。
天の川に行った人間
天の川は実は人間界のある海とつながっているという伝説があります。海辺にはよく浮木が流れてきますが、この流木が天の川の住民が人間界と天の川とを行き来できる乗り物なのだそうです。
昔博望候張騫という人がいて、漢帝国の武帝から「天の川の源はどこか探してこい」という無理難題な命令を受け張騫は浮木に乗って天の川に行こうと乗り込んで、何日も漂っていた。昼と夜の区別もつかなくなってきた頃にやっとどこかに流れ着きました。ここはどこかと顔を上げると、大きな建物が見てその中の部屋ではたくさんの女性が機を織っていたといいます。
そこに一人の男が牛を連れて通りがかったので、彼に声をかけてみる。「ここは一体どこですか?」すると、「私は答えられないが、蜀の厳君平に聞いてみなさい」と言われたので、張騫は再び浮木に乗って人間界に戻りました。その後で君平にあいに行き、出来事をすべて話しました。すると君平は「それは天の川だったのだよ」と答えたといいます。
寿星について
『史記』の中に、寿星という、星の神様が出てくる。この神様は別名南極老人星とも呼ばれ、この星が空に現れると、平和な世の中になるという言い伝えがあり、人はこの神を盛んに祀りました。
寿星はとてもお酒が好きで、お酒を飲むためによく人間界にやってくると信じられていました。ある時、京師に一人の道人が現れました。彼は酒屋に立ち寄って、ガブガブと酒を飲んだ。しかしどれだけ飲んでも平然としていたので、皆が驚いてその噂はまたたく間に広まっていき、ついには王様の耳にも入りました。
王様は「面白い老人だ。王宮につれてきて酒を振る舞おうではないか」と言って彼を宮中に招きました。王様が酒を勧めると、到底飲めるはずのない量の酒を一瞬で平らげて出ていってしまいました。
その翌日、宮中の天文学者は「寿星が帝座に臨んで、いつものところにいなくなりました。」と言いました。すると王様は朗らかに笑って、「昨日酒を平らげた老人は寿星であったのか。どうりで酒を沢山飲んでいた」と言いました。
北斗七星を生け捕る
昔一行というお坊さんがいました。貧しい家に生まれた一行のことをある老婆が世話をしてくれました。一行はこの老婆に大変恩義を感じていました。ある時老婆の息子が人を殺してしまい、逮捕されてしまった。その知らせを聞いて老婆は大層悲しんでいました。
そして老婆はお坊さんである一行に相談することにしました。「どうか私の息子の命を助けてください」と言いました。すると一行は「昔世話になったから、恩義として助けたいのはやまやまなんですが、刑務所の奴らは頼み込んでも、決まりを破るようなことはしないんだよ。だから難しいなあ。」と答えました。すると老婆は怒り狂って、「昔世話もしてやったのに。お前を見損なったよ」と言って帰ってしまいました。その姿を見て一行はなんとか助けられないだろうかと考えあるアイデアを思いつきました。
一行は自分の家である寺の一室にお手伝いを呼んで、街の外れに荒れ果てた園があるだろうと話した。そして彼らに対して「その園に行ってじっと隠れていてほしい。昼から夜にかけて豕が七匹やってくるから、それをすべて捕らえてくれないか。一匹も捕り過ごしてはいけないよ」といいました。そしてお手伝いさん達は、その現場に行って七匹を捕まえ、寺に帰リました。そして一行は七匹の豕を瓶の中に閉じ込めました。
翌朝寺の門をたたく音があり、見に行くと玄宗皇帝からの使いで、「すぐに王宮に来てほしい」と言いました。一行はこころの中でしめたと思い真柄、宮殿に急ぎました。すると、皇帝は「昨夜から北斗七星が見えなくなってしまったのだ。これはなにかの前兆であろう。なにか知っていることがあれば教えてくれ。」と言いました。一行はまた心のなかで「私が捕らえたのだから見えなくなって当たり前だ」と思っていました。そうですあの七匹の豕は北斗七星の星々だったのです。しかしあくまで知らないことを装って「これはこれは大変なことです。北斗七星が消えたとは。。。大惨事であります皇帝陛下。畏くも申し上げますが、これは天から陛下への警めに違いありません。」と言いました。すると皇帝は「なんてことだ。私がなにか悪いことをしてしまったのだな。どうしたら天の怒りを癒えるだろうか。」と相談しました。続けて一行は「恩赦(犯罪者を釈放する)を仰せ出されてはいかがでしょうか。」とアドバイスし、皇帝はすぐに詔を出して、罪人は釈放されました。そこにはあの老婆の息子もいました。こうして老婆の息子は死なずにすんだのです。
一行は寺に帰ると、七匹の豕を開放してやりました。そして走ってどこかへ行ってしまいました。するとその日の夜から星が一つづつ現れ、一週間後にすべての星が空に返ってきたといいます。
貝の中の美女
晋安に謝端という一人の書生がいました。彼は生まれつき潔白正直で、女の色香に染まったことなど一度もなかった。ある日謝端は海辺に出て、あちこちを歩いていた。するとそこにとても大きな貝があるのを見つけた。その貝がどうも気になり、謝端は2つに割ってみることにしました。
すると中からとても美しい女性が出てきたのです。謝端は驚いて「あなたは誰ですか?一体何で貝の中に隠れているんですか?」と聞きました。すると女は「私は天の川に住んでいる白水素女と申します。天帝があなたの潔白正直な姿に感動して、私をあなたのお嫁さんになるよう命じられ下界にやってきました」と言いました。
しかし謝端は「黙れ。そんな淫らな言葉に惑わされるわけがあるか。お前さては妖魔だな。つまらんことを行ってないで帰れ。私を惑わそうたって無理だぞ」と言いました。白水素女はその潔白さに流石に驚きながらも「いいえ、決してそんなものではありません。私は天帝の言いつけでやってきたのです。どうか側においてください」と頼みましたが、謝端は「いや。お前は妖魔だ。汚らわしいから消え失せろ」と言い。白水素女はとても悲しんで、「そんなにいわれては仕方がありません。では帰ります」と言い残し雲に乗って天に帰ってしまいました。
ここまでのストーリーは「述異記」に書いてあるものだそうですが、「捜神記」のストーリーは少し違います。
謝端は小さい頃両親を失い、隣の人が哀れんで自分の家で養ってくれていました。謝端が17歳になった頃、海に遊びに行くと、海岸で大きな貝を手に入れました。あまりに珍しかったので家に持って帰って大事に保管しておきました。するとその後は、謝端が外から家に帰って来るたびに、片付けが済んで、食事の用意ができていたのです。謝端はとても不思議に思いました。そこで、いつものように出かけるふりをして、すぐに家に帰ってきて正体を暴こうとしました。
すると、そこには一人の美しい女がいて、料理をしてくれていた。謝端は思わず家に駆け込んで「あなたは一体誰なのですか?どうしてこんなに世話をしてくれのですか?」と訪ねました。すると女は「私は天の川から来た白水素女です。天帝が一人のあなたを哀れんで、私を使ってあなたのお世話をすることになったのです。」と言いました。謝端は「それはかたじけない。いつまでも私の家に留まってください」と言いましたが、白水素女は「それはだめです。私はあなたのために良いお嫁さんを探すことになっていましたが、正体がバレてしまったので、もう天の川に帰らなければなりません。米の蓄えは一生無くならないでしょうと言いました。」すると一瞬で白水素女は姿を消してしまいました。
まとめ
今回は星に関する伝説をお話しました。夢のある伝説も多く大変面白いですね。又次回もお楽しみに。 それでは。
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